マーケティングオートメーションの必修科目?リードのスコアリングについて考えてみた
こんにちは。マーケティング部の市野です。
今日は、マーケティングオートメーションの運用に関する記事を書いてみようと思います。
マーケティングオートメーション(MA)の運用をしていると、よく「スコアリング」という言葉を耳にしませんか?
基本的にどこのセミナーや資料を見ても、「スコアリングは難しいもの」として紹介されているから、自信を持って「ウチはスコアリング完璧やで」と言い切れる人は少ないかもしれません。
ユニリタでは2014年頃にMAツールを導入して、それなりに運用を試行錯誤してきたのですが、「結局のところスコアリングってこんなもんでよくね?」という複雑でないシンプルな設計に落ち着きました。
今回の記事では、「あんまり頭を硬くせずシンプルなスコアリングを考えてみようぜ」というスタンスで、MAツールのスコアリングについて記載してみます。
MAのリードスコアリングとは何か
リードスコアリングとは、リード(見込み客)の購入意欲を評価するために、顧客に対してスコア(点数)を付与することです。このスコアは、リードが過去に取った行動や、その人物の属性(部署・役職など)に基づいて算出されます。
リードスコアリングの目的は、営業チームが最も購入の可能性が高いリードに優先的にアプローチできるようにし、マーケティング活動を効率化することです。
スコアリングのメリット
①リードの優先度がわかる
スコアリングを行うことで、優先的に対応するべき顧客がわかりやすくなります。当然ですが、インサイドセールスのリソースは有限です。
できるだけ効率的にリードにアプローチを行っていくために、「今対応するべきリード」が明確化されている必要があります。
スコアはこの「優先度判断」に大きな効果を発揮します。
②顧客に影響を与えているコンテンツがわかる
優先度が高いと評価されたリードや、実際にアポイントが取れたリードが「どんなコンテンツで育成されたか」を振り返ることができるようになります。
Webページやコンテンツには、「そのコンテンツを作成した狙い」があるはずですから、この「狙い」が正しく達成されているかを評価できるようになるのは、大きな要素だと言えます。
③顧客の行動をリアルタイムに通知できる
リードがスコアを超過したときに、「今すぐアクションして!」という通知を行うことができるようになります。
スコアがない場合には、「特定の資料のダウンロード」や「セミナーや体験版の申し込み」などのコンバージョンをベースにインサイドセールスからのアクションを行うことになるため、「コンバージョンには至っていないが、一押しすればコンバージョンできる」顧客を取りこぼしてしまうかもしれません。
スコアリングのコツ
①できるだけスコアは「低く」作る
リードのスコアを定義するときは、できるだけ「アプローチ対象のリード」と評価される点数の閾値を低く設定しましょう。「100点」などの区切りのいい数字にしがちなのですが、スコアの閾値が高い場合、主に以下のデメリットがあります。
点数の重みが評価しづらい
80点と100点って、どのくらい「アツさ」が違うんだっけ?80点でアプローチしちゃだめなの?となりやすいです。
スコアリングの基準を見直しにくい
スコアロジックを抜本的に改変しようとした際に、「対象のリードのスコアをリセットしなくては……」という状態に陥ります。簡単に言うと「スコアの閾値を上げるのは簡単だが、閾値を下げるのは非常に難しい」ということです。
閾値のオススメは、30点くらいです。
②スコアは一定期間でリセットする
「スコアに変動がないリード」のスコアは1週間~30日程度を目安に0点にしましょう。これは絶対やったほうがいいです。
リードが自社や自社のサービスに対して抱く「興味・関心」は基本的に生モノだと思ったほうが良いと思います。
そもそもスコアが「今スグ客」を発見するためのものだとするなら、閾値を達成するまでジワジワと長い期間をかけてリードのスコアが上がり続けるのはスコアリングのコンセプトとズレてしまうかもしれません。温度感が下がったら評価を落とすほうが効率的なはずです。
ただし、中長期的に情報収集をしているリードを蔑ろにするわけではありません。「Webサイトの再訪問」などはプラス評価できるよう、若干高めにスコアを調整してもいいと思います。
③行動スコアと属性スコアの2軸で可視化する
リードのスコアは、属性情報と行動情報に分けて管理するのがオススメです。
行動情報
Webサイトの閲覧
資料請求
セミナーの申し込み
体験版の申し込み
過去の商談や他の自社サービスの導入実績
属性情報
業種
売上高
従業員数
部署
役職
ここで1つオススメなのは、属性情報は数値ではなくアルファベットなどで管理することです。
行動情報と属性情報をどちらも数値で評価して、お互いのスコアを足し算する方法もありますが、「ターゲットにしたい層」のリードがどの程度育っているかがわかりにくくなってしまいます。
営業施策としてアカウントベースドマーケティング(ABM)を実施していて、企業に対してTierなどで優先度を付与している場合には、Tierをかけ合わせるのも面白いかもしれませんね。
リードスコアリングを考える手順
ここでは、具体的にどのようにスコアリングを考えればいいのか記載してみます。いろいろな流派があるかもしれませんが、かなり一般論寄りの内容です。
①スコアリングを設定する「自社」の設定
この記事の中で仮想のスコアリングを行う企業の設定です。
設定
BtoB
提供しているサービスはサブスク型のSaaS
ターゲットの部署はバックオフィス向け
ターゲットの企業は従業員500名以下または売上高300億円以下
②スコアリングを検討するステップ
スコアリングの目的と目標を設定する
過去の商談や受注条件を振り返る
企業ペルソナと個人ペルソナを確認する
カスタマージャーニーとコンテンツマップを描く
スコアリング基準の決定
営業・マーケティングチームとの連携
1.スコアリングの目的と目標を設定する
リードスコアリングを行う前に、何を達成したいのかを明確にすることが重要です。
目的に応じてスコアリングの基準や方法が異なるため、具体的な目標を設定しましょう。
目標設定の例:
営業活動の優先順位付け: 営業チームが最も関心のあるリードを優先的にフォローアップできるようにする。
マーケティングの効率化: 無駄なリソースを避け、最もコンバージョン率が高いリードにターゲットを絞る。
リードナーチャリングの最適化: 購買意思が低いリードを適切に育成する。
2.過去の商談や受注条件を振り返り洞察を得る
スコアリングを行う上で、過去の商談やHOTリードの傾向について振り返りを行いましょう。スコアリング基準をより実際の成果に基づいて調整し、営業活動の効率を最大化できます。
振り返りを行うべき観点は以下の通りです。
①成約したリード(HOTリード)の特徴の分析
過去のHOTリード(実際に成約に至ったリード)を分析し、どのような特徴が共通していたのかを把握しましょう。この情報は、今後のリードスコアリングに役立てることができます。
リードの属性パターン(グレード/デモグラフィック):
業界、企業規模、役職、地域別の商談化率/受注率
役職や職位別の商談化率/受注率
リードの行動パターン(行動スコア):
成約したリードが閲覧したWebページやダウンロードしたコンテンツ
商談化したリードのメール開封率、クリック率
商談化に至った「ラストタッチのキャンペーン」の割合
②失注したリード(HOTリード)の特徴の分析
成約した商談と同様に、失敗した商談の分析も重要です。
例えば、以下の観点が重要です。
どの段階フェーズでの失注が多いのか
商談が終了した理由(価格面、競合の影響、予算不足、ニーズ不一致など)
3.企業ペルソナと個人ペルソナを確認する
過去に成功した顧客や失敗した顧客をもとに、年齢、役職、業界、企業規模などの属性情報を整理しましょう。 ターゲットとなる市場も考慮し、ペルソナを具体化します。
例えば、以下のような観点です。
売上高
従業員数
業界
部署
4.カスタマージャーニーとコンテンツマップを描く
正直、めちゃくちゃ細かくカスタマージャーニーマップを描く必要はないと思います。ただし、このくらいの興味関心度の人に刺さるコンテンツはどれかな? とか、ペルソナに合うコンテンツはどのくらいあるだろう? ぐらいは可視化しておくと良いと思います。
営業チームやマーケティングチームと、HOTリードへのアプローチ方法や育成シナリオを考えるときに役に立ちます。
おおよそ以下の観点でまとめると良いと思います。
認知段階:
企業紹介や業界トレンドに関するコンテンツ
ブログ記事やインフォグラフィック
検討段階:
競合比較や製品機能、価格に関するコンテンツ
課題にフォーカスしたホワイトペーパーやケーススタディ
決定段階:
製品のデモンストレーションの動画や導入事例
5.スコアリングとグレード基準の決定
①スコアリング
スコアリングは、基本的にリードの行動情報をベースに設計します。
業種や部署、役職属性情報を含む設計をしている会社もかなり多いと思います。
当社では、Web行動にしぼり、属性情報はグレードで管理しています。
スコアリングには加算と減算が必要ですので、リードの行動にあわせ点数を増やしたり減らしたりします。
代表的なスコアの変動要素は以下のようなものです。
メールのクリック
Webサイトの訪問
料金ページの閲覧
セミナーの申し込みや参加
資料のダウンロード
体験版の申し込み
同じページへの複数アクセスを「興味が強い」と捉えることもできるため、複数回カウントする場合もあると思います。ただし、やみくもにスコアが上がってしまうことも多いため、結構好みがでるところだとは思います。
1日に上がるスコアの「上限」を決めるのも効果的ですし、1日で上限を稼いだリードを「ウォッチ対象のリードとして通知する(インサイドセールスに割り当てる)」のもいいかもしれませんね。
個人的な好みで言えば、複雑なのは嫌なので「1日の上限を決める」だけです。
加算だけではなく、減算のルールも考えます。
一定期間活動がない
7日~30日程度リードのスコアに変動がない
コンタクトを拒否
フォームの選択肢で営業行為を拒否した
インサイドセールスがアポイントの獲得に失敗した
商談の失注
減算ルールはこんなところでしょうか?
……自分で書いておいてこんなことを言うのもなんですが、「一定期間スコアに変動がなかったら0点に落とす」だけでも十分だと思います。
②グレード
商談化率・受注率が高い「ペルソナ」の条件に合致するほど、グレードは上昇します。
例えば、
売上高 :100~500億
従業員数:200~500名
業界 :小売業
部署 :IT部門
とペルソナを定めた場合、合致した条件の数でグレード(DからSのアルファベット)を割り振るようなイメージです。
従業員数300名で、売上規模が700億円の小売業に属するIT部門のリードなら、従業員と業種、部署が一致しているので、グレードは「A」ということです。
購買の意思決定を行う顧客にはフラグを立てたり、グレードに「+」をつけて加算してもいいと思います。
ただ、こだわりすぎもよくないです。
ある程度ザックリでいきましょう。
長く運用するための結構大事なコツです(長期間見直しをしない、というワケではないです。データを見て振り返りはしましょう)。
6.営業・マーケティングチームとの連携
スコアを決めただけでは意味がないので、リードスコアリングを効果的に運用するためには、営業やマーケティングチームと連携する必要があります。
定期的なフィードバック
営業チームからのフィードバックを受けて、どのスコアリング基準が効果的であったかを定期的にレビューし、改善を図りましょう。
明確なアクションフローの構築
高スコアのリードには営業チームがすぐにアプローチできるようにしましょう。
同じく、ナーチャリングが必要なリードにはマーケティングが育成活動を行えるよう働きかける必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
マーケティングオートメーションにおけるリードスコアリングは、単に数値を付けるだけではなく、リードの状況に応じた戦略的なアプローチが求められます。
これらを実践することで、効率的かつ効果的なマーケティング活動を実現できると思います。
ぜひ参考にしていただければと思います。