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スノーリゾートのDXに挑む、ユキヤマとユニリタのデータサイエンスの取り組み

こんにちは。
ユニリタnote編集部です。

ユニリタは、スキー場での情報発信・コミュニケーションを可能にするアプリ「yukiyamaアプリ」 を提供するユキヤマさまと協業しています。

そこで今回は、
実際にどんなことを一緒に取り組んでいるのか、
その紹介記事をユキヤマさまに書いていただきました!

ここからは、ユキヤマさま視点で両社の取り組みをご紹介します。



株式会社ユキヤマ(以下、ユキヤマ)と株式会社ユニリタ(以下、ユニリタ)は3年前に資本業務提携を締結し、データサイエンス事業で協業をしています。

データサイエンスとは、
「大量のデータから価値ある情報を抽出し、ビジネスの意思決定に活かしていこう」
という取り組みです。

ユキヤマとユニリタが行うデータサイエンスは、「yukiyama」で取得している約140万件の滑走データを、各スキー場で取得しているデータと組み合わせて、スノーリゾート全体の運営の効率・最適化を進めていくことが目的です。
この取り組みをキッカケに、将来的には、スキー・スノーボード産業全体が底上げされることを期待しています。

また、yukiyamaアプリの利用者視点で見ると、混雑具合や満足度など、利用者にとって重要な情報が可視化されるので、遊びの幅や選択肢も広がっていきます。

ユキヤマとユニリタのデータサイエンスチーム

本特集では、全3回にわたってユキヤマとユニリタのデータサイエンスの取り組みをご紹介していきます。
1回目は、両社がデータサイエンスに取り組むことになった背景・目的からスタートし、プロジェクトに関わる人たちの想いやビジョンなどの内面の部分に焦点をあてていきます。

創業当初は想像できなかった滑走記録の価値

データサイエンスのキッカケ

岡本:「yukiyamaアプリは、リリース当初からアプリを使うユーザーがどうすれば楽しめるのかということを考えていました。続けていく中で、溜まった膨大な滑走データが何かの役に立つんじゃないかと思いました。集めたデータを分析することで、スノーリゾートの運営が楽になったり、もっとおもしろくなったりするのではないかと思ったんです」

ユキヤマ 代表取締役 岡本

ユキヤマとユニリタがスノーリゾートをDXできる理由

両社の強み

ユキヤマは、マップ上で滑走をGPSトラッキングして記録を残し、その記録をユーザーたちとシェアすることができる、雪山を遊び尽くすためのポータルアプリ「yukiyama」を提供しています。
利用者数は30万人を超え、スキー・スノーボード愛好家向けアプリとしてはトップシェアを獲得し、膨大な滑走データを有しています。

ユニリタはITによる社会課題の解決を事業方針に掲げ、「地方創生」「一次産業活性化」などの分野で多数の実績を残しています。
今まで情報のデータ化が進みにくかった領域での「データ化」や「見える化」に強みがあり、その膨大なデータを最適な形で可視化し、提供することで、効率化や生産性、利便性の向上に貢献し、売上の向上や人件費の削減など数値的な価値を出しています。

異なる強みが生み出すシナジー

端的にまとめると、
ユキヤマは、yukiyamaアプリで取得した膨大な滑走データを持っていることが強みです。
ユニリタは、データ分析サービス事業の領域で秀でていて、データの分析と可視化が強みです。

つまり両社が協力すれば、
膨大な滑走データに意味を持たせて、スノーリゾートの運営に活かせる形で可視化することができるでしょう。

これがまさに、ユキヤマとユニリタが挑んでいるデータサイエンスの取り組みです。

岡本:「yukiyamaアプリでは22-23シーズンで約140万回のチェックインのデータが取れています。つまり、約140万回スキー場を滑走しているデータがあって、そのデータを有効的に使うにはどうすればいいかを考えています。
例えば『どのコースがどんな人たちに人気なのか』『どこからスキー場に来ているのか』といった属性に紐づいた行動のデータがあります。今までは来場者にアンケートを実施して、スキー場の中だけでしか取ることができなかったものですが、yukiyamaアプリからそういったデータを抽出すれば、その手間を省けます。スノーリゾートの運営に活かしていけるデータの提供を行っていきたいですね」

yukiyamaアプリの実際の滑走画面

スノーリゾートが直面する課題とITの可能性

滑り手として感じる、DXの必要性

岡本:「スキーブームの時は、1,000万人以上のユーザーがいましたが、今では年間400万人くらいまで減っています。それに伴って売上も減少傾向ですが、スキー場の業務自体は減っているどころか、むしろ増えていたりします。日本のスキー場の雪質やホスピタリティは海外でも評判がよく、インバウンドは今後も増えるでしょう。人手不足は既に課題になっており、少しでもITの力を使って現場の業務負荷を軽減したり、業務効率を向上させたいと思っています。
例えば、館内放送のお知らせをプッシュ通知で行って情報伝達の効率を上げたり、来場者の属性データをアプリのチェックインから取れれば駐車場の人が手動でカウントする必要がなくなります」

従業員が滑り手として感じたことがアプリに活かされる

「体験の質の向上」という点で参考になるテーマパークの事例

井上:「スキー・スノーボードのような娯楽は、テーマパークもライバルの一つです。
某テーマパークでは、来場者の9割がアプリを使っていて、そこから情報を収集してプッシュ型の発信もしています。収集したデータはそのままマーケティング戦略に活かされ、繁忙期の人員配置の最適化や、設備投資の方針の決定など将来の予測に役立てているそうです。
yukiyamaアプリがスキー・スノーボードで必要不可欠なものになれば、テーマパークでやっていることはデータサイエンスで実現できるはずです。スキー場が提供できるものの精度が高くなるので、来場者の体験の質が上がると思います」

ユキヤマ 営業統括 井上

ユニリタのデータサイエンスチームが分析と可視化を行う

地域活性化の経験を活かす

ユニリタの子会社である株式会社ユニ・トランド(以下、ユニ・トランド)では、位置情報とそれに紐づく利用者のデータ分析によって地域活性化に貢献している実績があります。
ユニリタのデータサイエンスとユニ・トランドの地方創生の取り組みのナレッジを組み合わせることで、スノーリゾートを一つの地域と見立てて活性化できると考えています。

高野:「スノーリゾートは一つの街だと思っています。泊まる、食べる、買う、遊ぶという要素が全部入っているので、われわれの事業の街づくりや地方創生という部分ですごく合致すると思いました。位置情報だけの単純な分析だけではなく、ユキヤマさんとさまざまな事業を一緒にできるんじゃないかと思っています」

ユニ・トランド 代表取締役社長 高野氏

スキー・スノーボードの滑走記録を分析する難しさとやりがい

梅田:「スキー・スノーボードのデータを扱うのは初めてです。バスの位置情報データを分析したことがあったんですが、スキーは滑り降りるので、位置情報とは別に高度という高さの情報が入ってきます。
そこは、難しさがありましたね。ユキヤマさんとのデータサイエンスの取り組みがなければ『スキーはレジャーで滑るもの』という感覚しかなかったので、データで切り出して、いろいろな角度から分析するのはおもしろみがあります。
実際にスキー場の方々に可視化したデータを見てもらって、どんな反応が返ってくるのかが楽しみです」

ユニリタ ソーシャルイノベーション部
ソサエティーデータサイエンスグループ 梅田氏

坂本:「わたしたちが提案するデータサイエンスのアウトプットの形とスキー場の方が求めるイメージが違うことがあります。今までは、技術者に近い方々と話し合うことが多かったのですが、スキー・スノーボードの分野ではそれとは違ったアプローチが多く、いろいろな観点で勉強になっています。
ユキヤマの井上さんが各スキー場から収集した意見に応えられるようなデータを見せられるようになってきているので、改善の余地はまだありますが、現場の声を聞けるのが楽しみです」

ユニリタ ソーシャルイノベーション部
ソサエティーデータサイエンスグループ 坂本氏

滑走記録に価値を持たせるデータサイエンス

想像ではなく現場の声が重要

高野:「例えば、われわれみたいなIT事業者が現場を想像して、仮説を作ることはできます。
しかし、答えは現場にあると思っています。ユキヤマさんも、営業の井上さんがスキー場の方とお話して、課題の情報収集をされてるじゃないですか。想像ではなくて、現場から持ってきた課題が一番重要だと思いますし、そこに対してデータを分析して、どんな風に可視化すれば課題が解決するのかを考えるのが大事です。
アジアの方々はこれから日本のスノーリゾートにいらっしゃると思うので、そこのデータも収集して分析できれば、このデータサイエンスは日本だけではなく、他の国や地域でも展開できるのではないかと思っています」

岡本:「データの可視化は、数値が同じでも基準が変わるだけで見え方が変わります。スキー場の方たちが本当に必要としている見え方という点では、答えを100%出せているわけではありません。
例えば、スキー場の規模によって混雑の感じ方が違います。コース幅が広い場所の100人と、狭い場所での100人では違うので、どの水準まで人が集まると『混雑』と表示するのかを考えたりしています。今は、スキー場ごとに個別にロジックを変えていて、基準を作っています。スキー場の人たちの実感値とデータの差が生まれないようにしなければなりません」

データサイエンスのミーティング風景
コースごとの混雑度を可視化した実際の画面

データサイエンスで将来的に実現したいこと

アプリ利用者の利便性を向上させる取り組み

伊藤:「わたしは主にyukiyamaアプリのユーザー向けのデータサイエンスを担当しています。スキー場内での体験をよりよくするものを作ることが目的です。分かりやすいところでいうと、『混雑度』『満足度はどこが高いのか』という情報をアプリで見られるようにしたいと思っています。
また、アプリではスキー・スノーボードに関する詳しい情報も登録できるので、そういったデータを滑走履歴と紐づけて、コースのレコメンドやオススメのギアなどを提案できたらおもしろいはずです。
データサイエンスで利用者の体験の質を向上し、最終的にスキー・スノーボードブームが再び訪れることを期待しています」

ユキヤマ マーケティング 伊藤

ユーザーと一緒に創る業界の未来

岡本:「データサイエンスの精度や価値を高めるためには、もっと多くの人にyukiyamaアプリを使ってもらうことが必要です。自分が主導でマーケティングしているのもあって、現在の登録者はスノーボーダーの方々の割合が多いです。われわれがまだアプローチできていない、スキーヤーの方たちにも使ってもらいたいですね。
皆さんがyukiyamaアプリを使えば使うほど、スノーリゾートでのビジネスに必要なデータが集まります。このデータサイエンスの取り組みで、最終的にはその地域の飲食業を含めた観光業全体に貢献していきたいと思っています。既にユーザーの皆さんも『yukiyamaアプリを使うこと自体がスノーリゾートの全体の産業を活性化させていくことに繋がっていく』と思ってもらって、応援していただけるとありがたいです」

第2回では本取り組みに期待を寄せる業界関係者の声を特集します。


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