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データサイエンスで実現するスノーリゾートのDX丨スキー場の経営改善を促すデータの価値とは【ユキヤマ×ユニリタ社長対談 】

こんにちは。ユニリタnote編集部です。
前回は「データサイエンスで拡がるDXの可能性と業界関係者からの期待」と題して、ユキヤマさま視点で業界関係者の方々の声をご紹介しました。

今回はその最終回ということで、
ユキヤマさまとユニリタの対談について、
その紹介記事を再びユキヤマさまに書いていただきました!



株式会社ユキヤマ(以下、ユキヤマ)と株式会社ユニリタ(以下、ユニリタ)のデータサイエンスの取り組みを2回に渡ってお伝えしてきました。
最終回となる今回は、両社代表の対談を特集。
「データを価値に変えていく」という話を軸に、スキー場の経営改善にデータサイエンスをどのように活かしていくかをそれぞれの視点で語りました。

ユキヤマとユニリタについて

写真左:株式会社ユキヤマ 代表取締役 岡本圭司、
写真右:株式会社ユニリタ 代表取締役 社長執行役員 北野裕行

岡本:ユキヤマの岡本です。
「スキー・スノーボードのウィンタースポーツ業界をITの力を使って変革したい」という思いがあり、サービスを立ち上げました。例えば、海外のスキー場ではITのサービスが進化していますが、日本では、まだ紙のチケットやマップが主流で少し遅れを取っている印象です。
しかし「日本の雪は世界最高の資源」との評価があり、その恵まれた環境を活かし、ITでスキー場の運営が効率化されれば、サービスレベルが向上し、ユーザー体験の質が上がって、冬のスポーツやアウトドア活動を楽しむ文化が定着していくと思っています。
アプリ、デジタルサービス、データサイエンスを活用してスキー場の運営をサポートしていくことが目下、我々の目標です。

新しいメンバーが直近に加わったユキヤマチーム

北野:ユニリタの北野と申します。
当社は「ユニークな発想」と「利他の精神」を大事にしており2つの言葉を合わせてユニリタと名付けました。我々はお客様からの依頼を受けるのではなく、世の中の課題を解決するプロダクトを先行投資型で提供しています。企業のIT課題の解決をメインに行っていますが、当社は社会課題の解決も非常に重視していて、子会社のユニ・トランドでは、地方創生や農業におけるITの活用などを推進しています。

お客様のデジタル変革を実現するパートナーを目指し、挑戦を続ける

社会全体の中で見たスノー業界のDXの進み具合

岡本:今日は色々なことを聞きたいと思っています。正直にお話すると、スノー業界以外のことをあまり知らないんです。大学は卒業していますが、その後就職するかプロになるかの選択で悩んで「好きなことをして生きていこう」と思い、プロになりました。そこからスノーボードだけをしてきたので、他の業界がどのように進んでいるのかは感覚的にしか理解できていません。
なんとなく「スノー業界は他の業界と比較すると何年か遅れてるんじゃないか」と思っていますが、北野さんはどう思われますか。

北野:スノー業界に限らず、デジタル化が進んできたのは最近だと思っています。例えば、居酒屋さんに行くと「ディスプレイから注文してください」という形でタッチパネルを渡されますよね。あれってすごく合理的です。注文の聞き間違いがなくなりますし、もし注文を間違えていたとしても自己責任になりますよね。お互いがハッピーになる仕組みなんですよ。そういうことが一般的になってきたのは最近の話だと思います。
だから、特別にスノー業界が遅れているとは思っておらず、他の業界とそこまで変わらないのではないかと思っています。

岡本:とはいえ、感覚的にスノー業界は遅れている気がしています。
例えばスキー場のレストランでタッチパネル形式の注文を導入しているところは、ほぼ聞いたことがなくて、カウンターに並んで「カレーをください」という感じです。お会計もレジに並んで精算なので、それが行列の原因になって、レストハウスに入れないことがあります。同じように、チケットも窓口でしか購入することができず、そこに1時間並ばなければならないということもあるので、これは大きな課題だと思います。

北野:たしかにその時間は非常にもったいないですね。

岡本:インターネットで事前にチャージして、現地で並ぶ必要がないスキー場も徐々に出てきていますが、なかなか浸透していないのがリアルなところです。IT化という分脈では、紙のマップも少し遅れている部分かもしれません。一部の感度の高いスキー場はゲレンデ内で自分の現在地が分かる要素を含んだ自社アプリを作ったりしていました。
しかし、ユーザー側から見ると行く先々でのアプリのダウンロードが煩わしく、現実的ではありません。そういった課題を解決するサービスがyukiyamaアプリです。

北野:話をIT化に戻すと、コロナ禍以前からデジタル化をさまざまな業界で進めていこうとしてました。その速度を新型コロナウイルスが加速させましたよね。当時、タクシーの配車サービスがたくさん登場して、バーっと色んな広がり方をしましたけど、最終的に1つの一番使いやすいサービスに集約されていきました。最初は何を使えばいいか分からないんですが、そうやって1つに集約されてくると、何が一番便利なのか分かってきます。

個別の業界が遅れているというより、日本全体のデジタル化が遅れているんだと思います。未だに企業の中でも必ず紙でやらなければならないことが残っていますし、請求書を電子化するのがやっと今年から始まりましたからね。

岡本:なるほど。今回のデータサイエンスの取り組みもスキー場から見て世の中で一番使いやすいサービスになりたいです。現場では、未だに来場者の数を駐車場で手動でカウントしていたりするので、そういったところをDXし、滑る人だけでなく、少しでも働く人の負担の軽減と時間を効率化して、貢献できたらと思います。

「データを価値に変えること」が求められるデータサイエンス

データサイエンスの具体的な活用と進める上で大事なこと

北野:元々、地方創生をテーマに、北海道や四国、九州などで路線バスの問題を解決をやっていました。課題としては1時間に1本しかバスが来ず、乗りたい人が来るかどうか分からないバスを待たなければいけないという状態でした。

これを解決するために子会社のユニ・トランドで事業を始めました。その課題解決をお手伝いする中で、バスの時刻の情報だけではなく「どのような人がどこで乗降したか」まで分析できれば、その地域の交通全体をデジタル化することができて、それが最終的に地方創生に繋がると感じました。その折に、ユキヤマさんとお会いする機会があって、話していくうちに、スキー場とその周りのサービスを含めて、1つの街として見立てられるんじゃないかと思い、データサイエンスの取り組みを始めました。ゲレンデがあって、レストラン・ホテルがあって、バスが行き来してるので、地方創生のモデルの枠組みが当てはまります。

岡本:一緒にプロジェクトに取り組み始めて、約3年が経ちます。一番最初の取り組みは、スキー場周辺の周遊バスのデータを視覚化してサービス向上のための情報を提供することでしたよね。今はコースやエリアごとの混雑状況、利用者の属性や行動データ、顧客満足度に関するデータを集約・分析して、スキー場の関係者が簡単に理解できる形で提供することが目標です。

スキー場によってはマーケティングの方針を経験や感覚だけで行っていることもあるので、持っているポテンシャルを最適に活用できていないケースがあります。データサイエンスを利用して、例えば「どのユーザー向けにどうコースを設計するか」みたいな部分をより具体的に示せるようにしていければ最高です。何より自分が滑る場所が面白くなっていくのが一番嬉しいです!また、東急の担当者の方とお話しした際には、コースの混雑状況や利用者の属性データを分析して、最適なパトロール配置などの運営戦略を検討するアイデアも出てきました。

yukiyamaアプリユーザーのゲレンデ内の動向を可視化

北野:我々はITのプロですが、スキー場の困りごとは分かりません。だからこそ現場のプロの方々と交わってイノベーションを起こさなければならないと思っています。現場で働いている人たちと一緒にやってみないと社会課題の解決はできないということが、路線バスのDXで分かりました。
「取得したデータをどのように使うか」ということを考えることが重要で、現場の困りごとは、やはりそこで働いている人じゃないと正確に分からないのです。

岡本:おっしゃるとおりだと思います。自分は現場の感覚を持っていますが、取得したデータの扱い方は分かりませんでした。そもそもエンジニア主体のチームではなかったですし、自分たちだけの資金と発想だけでは限界があることも感じていました。
それぞれ得意な分野が違うユニリタとユキヤマが協業すれば大きなシナジーが生まれるんじゃないかと思っていたので、このような形で一緒にプロジェクトを進められて嬉しいです。

データサイエンスのインサイトを経営戦略に落とし込む重要性

岡本:チャレンジングだと感じています。データを集約するだけならそこまで難しくないと思いますが、そのデータを可視化する部分が難しいです。同じ数字だったとしても、算出の仕方で見え方が変わるので、どのように表現すればスキー場の人が示唆を得られる見え方になるのかを考えなければいけません。

北野:単純に出てきたデータを見せるだけでは、恐らくスキー場の方々は「それは知ってるよ」という反応になると思います。そこで何が必要になってくるかというと、ベンチマークした他のスキー場のデータとの比較を示せるかが重要になってきます。基準になるデータと照らし合わせながら「御社はこのスコアはいいですけど、ここの改善が必要ですね」という形で診断ができれば納得感のある提案になりますよね。そのような観点で数値を話してもらえると経営者的には非常にありがたいです。そこに価値が生まれます。

岡本:ここのスキー場は「規模に対して滞在時間が短い」とか「リフトの乗っている回数が少ない」って分かったとして、「それはなぜなのか?」というところまで一般的な平均との差分も含めて、スキー場側に提案できたらいいですよね。

リフトの乗降データはスキー場運営に大きく関わる指標

北野:「データを価値に変える」というのが一番難しいと思います。マネタイズのモデルをどうやって作っていくかは課題ですね。

岡本:確かにそうですね。データを見せて「なるほど、面白いね」くらいで終わってしまうところを心配しています。どのようにアプローチしていくべきでしょうか。

北野:データと実績がちゃんとリンクするかが大事です。データサイエンスで見えたスキー場の課題に対して「こういう風に解決していきましょう」というのを提案して、それをちゃんと経営戦略に練り込んでもらいます。半年経ったところで売り上げが伸びたとか顧客満足度が上がったみたいな変化まで示せると非常に価値があります。それがうまくできてくるとデータサイエンスがスキー場の業務改善のプラットフォームになりそうです。

岡本:なるほど!ここからですね。

北野:これからですよ!

目指すところはデータサイエンスを活用したスキー場運営の総合サポート

岡本:「スキーヤー、スノーボーダーの人口を増やす」ということを最終的には実現したいんです。そのためには、スキー場をもっと面白い場所だと感じてもらわなければならないですし、そのために現状をきちんと把握するためのデータが必要です。先ほど北野さんからのお話にもあったような、データを用いたコンサルの部分まで含めてやれるようになるのが理想です。

yukiyamaアプリユーザーのスキー場の評価が可視化

北野:ユキヤマとして、データに基づいたコンサルティングの実績を積み上げていくと独自のポジショニングを獲得できるんじゃないかと思います。やればやるほど経験値とナレッジが溜まり、ベンチマークできるデータも取れていきます。なので、どんどん精度の高い提案ができるようになりそうです。コンサルティングは一回携わったら終わり、ということも多いですが、定期的にレポーティングするような形にしてオンリーワンのプラットフォームになれるような型を作るといいかもしれないですね。

岡本:ITを活用した、スキー場の運営サポートということですよね。

北野:はい。経営の可視化の重要性については業界問わず共通の認識があります。つまりスキー場も1つの企業なので同じことが当てはまりますよね。我々が今までやってきた、企業のコンサルやデジタル化の実績も活用しながら一緒に進めていきましょう。

岡本:ありがとうございます。スキー場側が「データを使いこなせなくて価値を感じられなかった」とならないように、マーケティングやオペレーションなど全体を包括したコンサルティングを行っていく必要があると思いました。

データの見せ方をyukiyamaアプリ開発メンバーで議論

北野:yukiyamaアプリは会員数が多いというのは魅力ですよね。

岡本:ありがとうございます。ただ、ユーザーの構成は少し偏っています。中上級者が一番多いボリュームゾーンで、リピーターの方が多いです。一般的には「シーズン中に1回しか滑らない人たち」の割合が多いので、そういった人たちのデータをもっと多く取らなければならないと思っています。

北野:うちの子供はアプリを入れてましたよ。

岡本:嬉しいです。1回しかスキー場に行かない人たちがyukiyamaアプリを使う場面は少ないと思っているので「ライトユーザーをどう増やしていくか」ということは課題の1つです。

選手活動へのサポートと「人への投資」の重要性

岡本:自分が選手活動を続けていく中で、選手としての身の振り方やセカンドキャリアについて、下の世代に伝えたいことがたくさんでてきました。そんな思いが背景にあり「ぼくが社会貢献をするためのコンテンツや事業に対してサポートをいただけないか」ということを北野さんに相談させていただいて、そこからぼくへのサポートが始まりました。

ワールドカップでの岡本

北野:私も昔は野球やスキーをやっていました。ゴルフは社内メンバーとやっています。なので、スポーツ自体は好きです。

ユニリタの社内メンバーでスキーに行った際の集合写真

北野:選手のスポンサーはしたことがなかったのですが、岡本くんから話を聞いて「ちょうどいいタイミングだな」と思ったので支援を決めました。
ブランディング戦略・社会課題の解決という点において、いい取り組みになると思っています。それに、岡本くん自身が選手としてすごく頑張ってますよね。パラリンピックを目指すというからには、それはもう全力で応援しますよ。次は何年後ですか。

岡本:2年後のイタリアですね。参加することになれば結果を出したいです。

北野:選手としての岡本くんと事業も併せて協業しながらサポートできるのはワクワクしますね。

岡本:自分以外にもIT業界で働きながらプレーヤーを続けて、スノー業界に貢献している人がいるので、そういう下の世代の人たちのライフモデルになれるように自分が前を走っていけたらと思います。

エンジニアをしながら世界的ツアーのFWTに参戦している勝野天欄、
新しいプロの形を体現する次世代ライダー

スキー・スノーボード人口を増やすために必要な人的投資の最適化

岡本:自分たちがやってることは、世界観としてはまだまだすごく小さいです。社会全体の課題解決に積極的に取り組んでいらっしゃるユニリタさんから見た時、どういった社会課題が大きいと思いますか。

北野:さまざまな観点がありますが、日本は「失われた30年」で圧倒的に世界から置いていかれました。原因として、人への投資をしてこなかったことが一番大きいんじゃないかと思っています。イノベーションが起こらなかったのはそれが理由だと感じています。ようやく今になって「どんどん人に投資をすべき」という流れになってきていますが、30年も置いていかれているのでアメリカや欧米と企業レベルの差が結構ついてしまったと思います。スポーツの業界はどうですか。

岡本:スポーツもIT化が進んでいます。選手の育成はちゃんとやれている印象で、特にスノーボードでは若い世代が大きな結果を残しています。そういった意味ではスポーツに関しては人を育てる重要性が浸透しているのかもしれません。

北野:そうなんですね。ビジネスにおいては、一般的には報酬が高いところにいい人が集まるので、IT化でスキー場の売り上げを最大化して、そのお金を人への投資に回していくことが大事になってくると思います。

岡本:はい。データサイエンスを活用したスキー場の人的投資の最適化はやらなければいけないということが分かりました。スキー場の運営が効率化されれば結果的にスキー場のサービスレベルが向上し、来場者の満足度も高くなって「また来たい」と思ってくれるはずです。遠回りにも見えますが、スキー場の経営改善を通して、各スキー場がユーザーを楽しませる仕掛けを考えられる余裕を作ることがスキー・スノーボード人口の増加には大事なことかもしれませんね。

北野:そうですね。変えていきましょう。

岡本:本日は大変勉強になりました。ありがとうございました。


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