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ユニリタの歴史 Part7(完結編) 〜クラウドサービスの成長とLMISの進化〜

皆さん、こんにちは。

ユニリタ 辻です。

この記事では、IT業界やユニリタの歴史を振り返り、ユニリタがどのようにして成長してきたか、どのような活動をしてきたかを紹介し、ユニリタがどんな会社なのかをお伝えしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

今回は2010年代からのクラウドサービスの成長と、それに合わせた当時のユニリタの対応や取り組みについて、ユニリタのクラウドサービスの1つであるLMISの進化を通じて、紹介したいと思います。



時代はクライアント&サーバー型へ 
ダウンサイジングとその影響

メインフレーム全盛期にシステム運用プロダクトから始まったユニリタ(当時ビーエスピー)は、「A-AUTO」「A-SPOOL」「A-LOG」などのソフトウェアを中核に、メインフレームのシステム運用においてデファクトスタンダードとなるソフトウェアを展開していました。

「A-AUTO」に関しては、過去の記事でもご紹介していますので、是非ご覧ください。

1990年代後半になると、日本企業のシステムはオープン系といわれるクライアント&サーバー型のシステムへの移行期の時代に入ります。メインフレームからクライアント&サーバー型への移行はダウンサイジングと呼ばれ、メインフレームと比べ安価なUNIXサーバーやWindowsサーバーで分散型システムの構築を検討する企業が多くなります。
しかし、当時のダウンサイジングにはまだ課題が残っており、多くの「動かないコンピュータ」を生むことになります。

「動かないコンピュータ」とは、システム導入の失敗事例の真相に切り込み、リスク回避のノウハウを紹介していた日経コンピュータに掲載されていた人気のコラムです。現在でも、日経クロステックに記事が掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。
記事の全文は有料会員向けのコンテンツとなっているようですので、その点はご了承ください。



ITILの登場と日本での普及

このダウンサイジングの潮流の中、ユニリタでもシステム運用における新しいビジネス作りを目指し、模索を始めていました。

時を同じくして、2000年代に入ると「ITIL」という概念が日本でも浸透し始めました。ITIL はInformation Technology Infrastructure Libraryの略で、ITサービスマネジメントやIT資産管理などのIT アクティビティの詳細なプラクティスのセットであり、ITサービスをビジネスのニーズに合わせることに重点を置いています。
最初のITILは、英国政府によって1989年に発行されました。当時の英国は経済不況に陥っており、そこからの脱却を目指す手段の1つとして、ITマネジメントの改革にも取り組むことになったのです。ITを上手く活用している組織にヒアリングを行い、成功事例を書籍にまとめリリースしたのがITILです。

当時のユニリタでは、子会社であるビーエスピーソリューションズがITILを普及する特定非営利活動法人「itSMF Japan」の会員となり、ITILを企業のシステム運用に取り入れるコンサルティングビジネスを始めていました。

このITILのコンサルティングビジネスで培った知見と、ユニリタで長年にわたって幅広い業種のお客様とともに作り上げてきた運用実績や専門ノウハウなどをベースに、ユニリタグループとして「LMIS(エルミス:Lifecycle Management for IT Service)」という新しい運用コンセプトを提唱しました。


ITIL実践を支援する「LMIS」の販売開始

そして、新たに展開するビジネスとして、コンセプトと同じ名称の「LMIS」というソフトウェアパッケージ(オンプレミス版)を2007年に販売開始しました。

「LMIS」のファーストユーザーは国内有数の食品卸売の国分様(現:国分グループ本社株式会社)です。基幹システムのダウンサイジングに伴い、システムの品質管理や内部統制等の業務を運用管理の主業務と位置付け、ITサービスマネジメントの構築を目的にITIL活用に着手していました。

その中でITILの「インシデント・問題管理」「変更・リリース管理」「構成管理」を最優先テーマとし、自社版のITIL構築後の定着化とITILの理解を深めるために、ビーエスピーソリューションズのコンサルティングサービスを活用いただくとともに、これらの課題を解決するためのシステム的手段が最適であると考え、「LMIS」を導入しました。

その後「LMIS」は10社程度導入されましたが、個社ごとにカスタマイズや設定が必要なアプリケーションだったため、導入費用を含むライセンス費用や運用保守費用が高く、なかなか導入企業数が増えませんでした。


クラウド時代への適応

そこでユニリタは、「LMIS」の新たなビジネス戦略を考えます。
2000年代後半にはサーバーの仮想化技術やAWSなどのIaaSと呼ばれるクラウドサービスが普及し始めていました。しかし、システム運用に携わる方はシステムに安定性を求め、トラブルに敏感であるので、世の中がクラウドサービスの時代へ移行する中でも、基幹システムに関係するシステムについてのクラウド化に対しては肯定的ではありませんでした。

それでも今後のクラウドサービス時代を見据え、導入障壁が低く、サポートし易い汎用性のある「LMIS」のクラウド版の開発に着手しました。
今でこそさまざまなクラウドプラットフォームがありますが、2010年当時は、ビジネスとして実績のあるものはほんのわずかで、その中でも特に実績のあったのが「Salesforceのクラウド基盤」でした。そのため「LMIS」のクラウド版はSalesforceのクラウド基盤を選び、開発に着手します。

2011年にサービス名称を「LMIS on cloud」とし、 ITILプロセスに準拠したサービスとしてリリースしました。ユニリタとして初めてのクラウドサービスの提供です。

当初の「LMIS on cloud」は、大手企業の情報システム部門のシステム運用・サポート担当のツールであったことと、インターネットを利用することもありレスポンスを重視したために、詳細画面は非常にシンプルな画面でした。

しかしながら、初期費用が安くサブスクリプションのモデルということもあり、ITILを導入している企業を中心に徐々に活用されていきました。また大規模ユーザーでの導入となると、導入前の整理と導入後の運用体制の整備が重要になり、ビーエスピーソリューションズのコンサルティングと「LMIS on cloud」を一緒にワンストップで提供することで、お客様の課題に応えることもできました。

余談ですが、2015年にビーコンITとビーエスピーが合併してユニリタになった際、私は「LMIS on cloud」を担当する部署の部門長となりました。2018年4月にユーザー数は100社を超え、100社達成でお祝いに部員から記念品を頂きました。記念として5年経ったいまでも飲まずに飾ってあります。

その後、ITILツールは、そのほとんどがクラウドサービスで提供されるようになりました。「LMIS on cloud」もよりユーザーフレンドリーな画面にバージョンアップされ、PCからタブレットやスマートフォンまで活用されるようになりました。

「LMIS on cloud」は先行してクラウドサービスとして提供していたノウハウを活かし、そのマーケティング・セールス戦略でユーザー数を増やしていきます。同時に、メインフレームという基幹システムのサポートサービスのノウハウを、「LMIS on cloud」を通じてお客様の成功を支援する「カスタマーサクセス(お客様の成功)」として活かすことで、高いサービス利用継続率を維持することにも成功しました。

2019年にはクラウドサービスでのサービス提供に一本化し、今までの「LMIS on cloud」を再度「LMIS」としてリブランディングをし、ロゴも刷新しています。

LMISのロゴ遍歴

2021年にはクラウドサービス版「LMIS」をサービス提供開始してから10年となり、周年記念サイトを展開するなど、10周年を祝うイベントも実施しています。


現在の「LMIS」は、企業のIT部門だけでなく、ITに関連するサービスを提供するITベンダーでの利用にも範囲を広げています。また「LMIS」で培ったカスタマーサクセスのノウハウをサービス化したカスタマーサクセスプラットフォーム「Growwwing」の販売も開始しています。

「Growwwing」「LMIS」と同じくSalesforceを基盤としてサービス提供しており、2023年4月にはSalesforce Japan Partner Award 2023にてコニカミノルタ様の導入事例にて「AppExchange Innovator of the Year」を受賞しています。


このように、当時、企画された新しいシステム運用のビジネスは、ユニリタの2つのクラウドサービスとして、今も成長を続けています。


今回はクラウドサービスの成長に合わせて、ユニリタのビジネス戦略とそれに合わせた製品開発の取り組みをお伝えしました。
いかがでしたでしょうか?

これまで「ユニリタの歴史」ということで、1970年台から2010年台の終わりまで、7回にわたりユニリタの歴史とその活動についてご紹介してきましたが、今回をもちまして終了とさせていただきます。

過去を振り返ることで、当時を知る人には懐かしい記憶を呼び起こし、若い世代には過去の出来事を知る機会を提供できたのではないかと思います。
私自身も、過去を振り返るよい機会になりました。

「ユニリタの歴史」の紹介は今回で一区切りとなりますが、今後は別のテーマで、再び皆さまとお会いできることを楽しみにしています。

最後になりますが、私の拙い文章にお付き合いいただき、心から感謝申し上げます。
ありがとうございました!


これまでの記事を年代別で、まとめてみました。